お知らせ (研修)
9月、第55回全国知的障害福祉関係職員研究大会(愛知大会)に参加しました。各分科会では、「働く」「老い」「自分らしく生きる」等について学び、多様な価値観を共有することが大切だと改めて考える機会となりました。
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9月27日(水)~29日(金)、第55回全国知的障害福祉関係職員研究大会(愛知大会)が名古屋国際会議場にて開催されました。主催は、公益財団法人日本知的障害者福祉協会等です。
テーマは「共にくらし 共にそだつ ~多様な価値の共感から、新たな価値の創造へ~」。今回の研修に参加したスタッフのレポートを紹介します。
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今回の研究大会には、当法人が大変お世話になっている名古屋市の社会福祉法人「あさみどりの会」が大会の主催者であるということ、また、その法人の元理事長、島崎春樹氏(当法人の恩人)の奥様、佐世様がお亡くなりなったのでお参りさせていただくという二つの理由で参加しました。
1日目の厚労省の内山課長による行政説明では、全国の障害者数(障害者手帳を保有している数)が858万7千人で、なんと人口の6.7%を占め、国の障害者に関する予算額は1兆8,666億円に膨れあがるとのお話をお聞きし、今のサービス事業は持続不可能と考えました。また、平成30年度より「自立生活援助」「地域生活拠点事業」等、新しい体系のサービス事業が出てきていますが、予算規模としては少ないので、見通しが持てない状況です。制度設計を見直すべきではないかと思いました。
2日目は分科会「働くということ」に参加。中央大学法学部の宮本太郎教授の講演「働くことと生活保障、これまでとこれから」のお話はとても勉強になりました。
「働く」の要素としては「稼ぐ」「生きがい」「つながり」が含まれるのですが、近代は「稼ぐ」という要素が大きくなり、「生きがい」「つながり」は小さくなりました。さらに、「生きがい」は「レジャー」「消費」への志向が強くなり、「つながり」は核家族化により、多くの人たちが地域や社会に目を向けなくなっています。
また、これまでは「働ける人が支える人」「働けない人は支えられる人」という2つに分けられて捉えがちでしたが、これからはそうではなく、「生きがい」「つながり」を重視するような「働き方」を考えるべきと投げかけられました。つまり「地域における新しい働き方」を考えるべきで、「働く」ことで、「つながりや生きがいを広げる」という視点が大切であるということです。
この考え方に全く同感です。私自身も残りの人生を、「生きがいとつながりを創る」というような「働き方」にしていきたいと考えています。
他にも農林水産政策研究所の吉田企画官による「はじめよう農福連携」、社会福祉法人無門福祉会事務局長による「障害福祉でサステナブルな町づくり」のお話も「働く」ということ、そして「障害者の就労事業」を考える上で勉強になりました。 (理事長 馬場 篤子)
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1日目は、厚生労働省・障害福祉課長による障害保健福祉施策の動向についての行政説明をお聞きしました。
2日目は、各分科会に分かれての研修です。「老いてこそ」をテーマにした分科会に参加。誰もが迎える「老い」というライフステージを豊かなものにするにはどうしたら良いのでしょうか。医療の発展・教育の普及・生活の社会的条件の変化により障害者の平均寿命は著しく伸び、60~70代の障害者も珍しくありません。(入所施設では90歳以上の方が暮らしている事も珍しくないとのこと)地域や施設で暮らす方の高齢化に伴う生活支援はどうあれば良いのでしょうか。そう考えながら、現状や課題、事例報告などの研究報告をお聞きしました。
具体的に今、出来る事とは?40~50代から始まり、60代になると身体機能・認知機能の低下や免疫機能の低下で病気になりやすくなる事は確かですので、日々の支援の中で身体面・機能低下に対する取り組みが必要となります。そこで、高齢期の存在の理解とプラスイメージを持ち、排除されることなく「老い」というライフステージに立てるよう準備をすることが必要です。若い頃から、自己選択・自己決定しながら、日々の暮らしの中で様々な経験やチャレンジを積むことがとても大事なことだと感じました。 (居宅介護支援センター 安倍 弥生)
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今回参加した分科会「自分らしく生きる」では、障害をもった方たちが自分らしく生きる事について、地域づくり・支援の2つの角度から学びました。
石川県にある社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)による講演「ごちゃまぜが生む化学反応」は、障害の有る無しにかかわらず、みんな「ごちゃまぜ」にして生活しているというお話でした。使われなくなったお寺をリフォームしてカフェにしたり、障害関係なく老若男女が住むことができる30戸超の家々があるシェアタウンを作ったりと大規模な街づくりを行っています。子どもたちは自発的に行事や大掃除を周囲に呼びかけ、タウンに住んでいる人たちは持ち回りでお店の店番を行う等、「ごちゃまぜ」の街づくりはそれぞれの役割・機能を次々に生み出しているようです。その中には障害をもった方々もおられ、時にはカフェの店員になったり、時には一住民として挨拶を交わしたりして、当たり前の生活をされているとの事でした。
滋賀県にある社会福祉法人やまなみ会・やまなみ工房からは、実践報告「すべては幸せを感じるため」が行われました。利用している方たちがいかにして自分たちの主張や存在を外に発信していったか、その実践した内容を学びました。
やまなみ工房では、障害を持った方たちと一緒にアート活動をされており、そこで生まれた作品は有名な個展で発表されたり、ファッションデザインに起用されたりしています。脚光を浴びる作品群の裏では、スタッフと利用者の方々の様々な葛藤があったとの事。自分達は何がしたいのか、何を知っているのか、知らないのか。「○○しなさい」という支援者の指示的な言葉が、どれだけ本人の自由や意思を縛っているか。それらを省みて、本人の動きをただ見守り、ようやく本人がしたいことを見つけるまで、相当な時間やトライ&エラーを費やしたというお話でした。
この2つのお話は、街づくりという「外」に向けての発信、個人の意思の尊重と理解という「内」に向けての発信という、極めて対照的な角度からのものだったと思えます。
内・外、どちらの発信にしても、そこに関わる人たちがどれだけ信頼し合えるか、情報交換し、互いを知ることができるかが重要だと考えます。
当法人の利用者の方々が、より自分らしくイキイキと生きていけるように、スタッフ全員でさらに検討を重ねていきたいと思います。 (出会いの場ポレポレ 姫野 健太)